お酒と体の基礎知識 · いつでも

知っておきたい、お酒の基礎知識。純アルコール・代謝・種類の違い。

この記事でわかること

純アルコール量の計算、肝臓の代謝プロセス、蒸留酒と醸造酒の違い——飲酒を自分でコントロールするための基礎を、公的機関の情報から整理しました。

目次(11項目)
  1. 純アルコールgの計算と具体例
  2. 肝臓の代謝プロセス
  3. 醸造酒と蒸留酒の違い
  4. 体質差はなぜ生まれるか
  5. 1. 遺伝(ALDH2)
  6. 2. 体格・体組成
  7. 3. 年齢
  8. 4. 性別
  9. 5. 一時的な要因
  10. 世界の「1ドリンク」基準比較
  11. 休肝日の意味と設計
  12. ストロング系飲料の話
  13. カロリーと栄養の基礎
  14. 記録を習慣化する方法
  15. FAQ — よくある疑問
  16. Q. お酒は「百薬の長」は本当?
  17. Q. 運動でアルコールを「燃やす」ことはできる?
  18. Q. γ-GTPが高いのは飲酒のせい?
  19. Q. 「肝臓は沈黙の臓器」って本当?
  20. Q. ノンアルコール飲料にもアルコールは入ってる?
  21. 参考文献

「ビール2本」「日本酒2合」が、純アルコールで何グラムなのか、即答できる人は少ない。この数字で飲酒を捉え直すと、毎日の選択が大きく変わる。

  • 純アルコール量の計算方法が分からない
  • ビール・ワイン・日本酒・ウイスキーの体への影響の違いを知りたい
  • なぜ「人によって強さが違う」のか、メカニズムを知りたい
  • 休肝日の本当の意味を知りたい
  • 缶酎ハイの「ストロング系」がなぜ問題視されるのか
  • 飲酒量の記録をどう習慣化すればいいか

結論: すべては「純アルコールg」に換算して考える。

酒種を超えて比較できる共通の単位が「純アルコールg」です。厚労省ガイドラインも、NIAAAも、WHOも、この単位で議論します。計算式は1つだけ: 量(mL) × 度数(%) × 0.8 ÷ 100。この換算を覚えた瞬間、ビールと日本酒とウイスキーが同じ土俵に乗ります[1]。


純アルコールgの計算と具体例

計算式: 量(mL) × アルコール度数(%) × 0.8 ÷ 100。0.8はエタノールの比重。

お酒を楽しむ場面
酒種量度数純アルコールg
ビール(350mL缶)350mL5%14g
ビール(500mL缶)500mL5%20g
ハイボール(缶)350mL7%19.6g
ストロング系缶酎ハイ500mL9%36g
日本酒(1合)180mL15%21.6g
ワイン(グラス1杯)120mL12%11.5g
ワイン(ボトル1本)750mL12%72g
焼酎(ロック1杯)60mL25%12g
ウイスキー(シングル)30mL40%9.6g

厚労省の「生活習慣病リスクを高める量」は男性40g/日・女性20g/日[1]。ストロング系缶酎ハイ500mL 1本で、女性の上限に到達する。

肝臓の代謝プロセス

アルコールは肝臓で2段階に分解される。

ナイトライフ
  1. 第1段階: アルコール脱水素酵素(ADH)が、エタノールをアセトアルデヒドに分解。アセトアルデヒドが有害物質で、顔面紅潮・動悸・吐き気を引き起こす
  2. 第2段階: アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が、アセトアルデヒドを酢酸に代謝。酢酸はさらに二酸化炭素と水に変換されて排出される

ALDH2には遺伝子の型によって、よく働く型と、働きが弱い・働かない型(欠損型)があり、欠損型の人の割合は地域で差がある(沖縄・九州南部・東北は30%台以下、九州北部や京都・大阪・愛知では50%前後)とされる[2]。これが「お酒に弱い日本人」の正体。

肝臓の代謝速度は体重1kgあたり約0.1g/時。体重60kgの人なら1時間に6g。ビール500mL(20g)の処理には約3.3時間かかる計算だ。

醸造酒と蒸留酒の違い

分類例特徴
醸造酒ビール・ワイン・日本酒糖質を酵母で発酵。糖質・プリン体を含む
蒸留酒焼酎・ウイスキー・ジン・ウォッカ醸造酒を蒸留。糖質・プリン体ほぼゼロ
混成酒リキュール・梅酒・カクテル蒸留酒+糖・香料。糖質が多いものも

糖質制限中は蒸留酒が選ばれやすいが、アルコール総量が同じなら肝臓への負担は同じ。「糖質ゼロ」は「カロリーゼロ」でも「アルコールの影響ゼロ」でもない。

飲み会のシーン

体質差はなぜ生まれるか

1. 遺伝(ALDH2)

最大の要因は遺伝。ALDH2遺伝型は変えられない[2]。

2. 体格・体組成

体重が重く筋肉量が多い人ほど、同じ量でも血中濃度が低い。

3. 年齢

肝代謝能は加齢で低下。40代から「以前より影響を感じやすい」と感じるのはこれ[3]。

4. 性別

女性は男性の約60%の量が同等。体水分量・ADH活性・ホルモンが影響。

5. 一時的な要因

睡眠不足・疲労・空腹・脱水・体調不良は、代謝能力を一時的に下げる。

世界の「1ドリンク」基準比較

国/地域1ドリンクの純アルコール
日本(e-ヘルスネット)10g(近年提案・使用されている基準。従来の「1単位」は約20g)
米国(NIAAA)14g
英国(NHS)8g
オーストラリア10g
WHO10g(リスク評価ベース)

国によって「1杯」の定義が倍以上違う。海外の論文を読むときは基準の換算が必要。

休肝日の意味と設計

毎日飲むと、肝臓は常に代謝と修復を交互に行う状態になる。週2日の休肝日は、肝細胞の回復時間を作る意味がある[4]。

  • 連続して2日休む方が、バラバラに2日休むより効果的
  • 「飲まない日」ではなく「代わりに何をするか」を決めると続きやすい
  • 家に酒を置かない運用も有効
  • 週末の連続日より、平日連続日の方が定着しやすい

ストロング系飲料の話

2019〜2020年以降、公衆衛生の観点からストロング系(9%前後の缶チューハイ)のリスクが指摘されている[5]。

  • 500mLで純アルコール36g — 男性の生活習慣病リスク量に近接
  • 糖分やフルーツ香料で飲みやすく、量をコントロールしにくい
  • 若年層・女性・高齢者で急性中毒のリスクが上がる
  • 2020年以降、複数メーカーが9%超の新規投入を控える動き

飲むなら缶の半分で止める・薄めて飲む・同量の水を挟む、のいずれかを運用に組み込みたい。

カロリーと栄養の基礎

アルコール1gは約7kcal。ビール500mL(純アルコール20g)でアルコール由来だけで140kcal、これに糖質分が加わる。

酒種1杯のカロリーうちアルコール由来
ビール 350mL約140kcal約98kcal
ビール 500mL約200kcal約140kcal
日本酒 1合約185kcal約151kcal
ワイン グラス約85kcal約80kcal
ハイボール約70kcal約67kcal
ストロング缶500mL約230kcal約252kcal*

*ストロング缶はアルコール由来で計算上すでに200kcal超。糖類ゼロでも高カロリー。

記録を習慣化する方法

  1. スマホのメモ/家計簿アプリに「今日のアルコールg」を1行だけ書く
  2. 週末に合計する。40g×7日=280gが生活習慣病リスクラインの目安
  3. 3週間続くと、数字を気にしながら頼めるようになる
  4. カレンダーに◯×をつけるだけでも、休肝日の頻度が見える

FAQ — よくある疑問

Q. お酒は「百薬の長」は本当?

かつての疫学研究でJカーブ(少量は心血管リスクが下がる)が議論されましたが、近年の大規模研究とWHO 2024年報告は「リスクが下がる安全量はない」との結論に傾いています[6]。少量でもリスクゼロではないのが現時点の国際コンセンサスです。

Q. 運動でアルコールを「燃やす」ことはできる?

アルコールの代謝のほとんどは肝臓で行われます。汗から出るのは約0.1%(呼気は約0.7%、尿は0.3〜4%)とわずかで、汗をかいてもアルコールが抜ける量はごくわずかです[2]。

Q. γ-GTPが高いのは飲酒のせい?

飲酒は代表的な原因ですが、脂肪肝・胆道系疾患・薬剤でも上昇します。健診で継続的に高値なら、医師に相談して原因を特定すべきです。

Q. 「肝臓は沈黙の臓器」って本当?

本当です。肝臓は再生能力が高く、かなり進行するまで自覚症状が出にくい。年1回のAST/ALT/γ-GTPチェックは最低限の防波堤になります[7]。

Q. ノンアルコール飲料にもアルコールは入ってる?

日本の酒税法上、アルコール度数1%未満が「ノンアルコール」扱い。0.00%と表記された商品は文字通りゼロです。運転前・妊娠中は0.00%表記を選ぶのが安全です。


酒種を超えて、すべては純アルコールgに換算すると同じ土俵に乗る。この数字を意識する習慣が、自分の体を守る一番シンプルな方法になる。

参考文献

  1. 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024-02): 厚労省
  2. e-ヘルスネット「アルコールの吸収と分解」: e-ヘルスネット
  3. 国立がん研究センター「飲酒と健康」: 国立がん研究センター
  4. 日本肝臓学会「慢性肝疾患ガイドライン」: 日本肝臓学会
  5. 国立保健医療科学院「ストロング系飲料と公衆衛生」レポート
  6. WHO Global Status Report on Alcohol and Health 2024: WHO
  7. 日本人間ドック学会: 日本人間ドック学会

免責事項: 本記事は一般的な健康情報の提供を目的とし、診断・治療を目的とするものではありません。持病・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、体調不安のある方は、医師・薬剤師等の専門家にご相談ください。記載の数値・目安は厚生労働省・各公的機関の公開情報を参照していますが、個人差があります。